住宅展示場を見に行ったとき、「きれいだったけど、自分たちにはちょっと現実離れしていたかも」「参考にはなったけど、たくさん見すぎて混乱してしまった」──そんな思いを抱いて帰ってきた方も多いと聞きます。 特に、家づくりが初めての方にとって、展示場は「夢」のような場所。でもその一方で、「これって私たちの暮らしと関係あるのかな?」という違和感や不安も、確実に胸のどこかに残っているはずです。
住宅展示場だけでは分からない“家の本質”について、少し掘り下げてみたいと思います。家づくりにおいて何を見るべきか、どこで判断を間違えやすいのか──見えているようで見えていない、その裏側にある大切な視点を、整理していきましょう。
展示場で見る家は「あなたの家」ではない。
住宅展示場に並ぶモデルハウスは、広々とした玄関や吹き抜け、高級仕様のキッチンなど、まさに“理想の住まい”を演出する空間です。けれども、その家が実際の暮らしにマッチするかどうかは、また別の話です。
たとえば、展示場にあるリビングは30帖以上あることが一般的ですが、実際に自分たちが建てる家はどうでしょうか?土地の広さや予算の兼ね合いもあり、現実的には20~25帖前後になることが多いはずです。加えて、展示場では照明やインテリアがプロの手で完璧に整えられているため、空間の印象は“実際よりも広く、明るく、美しく”感じられます。こうした演出効果をそのまま「参考になる」と捉えてしまうと、実際の家づくりで「思ったより狭い」「モデルハウスと全然違う」と感じるギャップに直面してしまいます。
つまり、展示場の家は「暮らしを体感する場所」ではなく、「イメージを膨らませる場所」。どんなに魅力的に見えても、その家があなたの生活とどれだけフィットするのかは、別の視点で確かめる必要があります。
図面やスペックでは見えてこない住み心地の正体
多くの人が家づくりで重視するのが、「間取り」や「設備仕様」、そして「価格」。これらは当然、比較検討すべき大切な要素です。しかし、「快適な暮らし」や「住み心地の良さ」といった、本来家に求められる価値は、図面や数字ではなかなか伝わってきません。図面でみる間取りの良さは、あくまでも平面で見たものであり、ここが、7割の人が失敗したと思ってしまう大きなポイントです。
平面図だけで絶対に間取りの良さを理解できないと思っていただいて間違いないです。平面図で見ると数字にばかり目が行ってしまうということは、プロでも起きえます。一番大切に思っている平面図こそが落とし穴と言い切っても過言ではありません。平面図を見るなという話ではありません。平面図では空間の広がりなどは分からないからこそ、営業マンが書く平面図やパースではちゃんとした空間であるかどうかが分からないということなのです。
たとえば「南向きのリビング」と書かれていても、その窓の外に何が見えるのか?日差しは入りすぎていないか?人通りはどうか?といった情報は、実際にその場に立ってみないと分からないことです。動線についても同様で、「洗面所のすぐ隣にファミリークローゼットがあるから便利」と図面に書かれていても、家族の生活リズムによってはかえって混雑の原因になってしまうこともあります。
“住み心地”とは、広さや間取りの数字だけではなく、光の入り方、風の抜け方、空気感、距離感といった、五感でしか捉えられない情報の総体です。住宅展示場では、それらを体感することは難しく、「良さそう」という先入観だけで判断してしまいがちです。
「無料プランします」の裏にある落とし穴
展示場でよく耳にする「無料でプランを描きますよ」という提案。聞こえは魅力的ですが、そのプランがどのように作られているのかを、少し立ち止まって考えてみてください。
多くの場合、それは営業担当がテンプレート的に描いたものであり、敷地の個性や家族のライフスタイル、日々の暮らしの動き方までは反映されていないことがほとんどです。「南向きのリビング」「対面キッチン」「吹き抜け」──そんな“人気の間取り”を詰め込んだプランに、あなたらしい暮らしの姿はあるでしょうか?
プランは、誰が、どんな意図で、どんな背景を持って描いているかがとても重要です。つまり、図面の“中身”よりも、“過程”を見る必要があります。短期間でパッと出てくる間取りは、それだけ思考の深度も浅いということ。丁寧にヒアリングを重ね、想いを言葉にしながら一緒につくっていくプロセスがなければ、「住み始めてからの違和感」は消せません。
展示場をたくさん回っても、家づくりの軸がブレていく可能性があります。
「たくさんの展示場を見て、どこが良いか比べよう」と思っていても、回れば回るほど迷いが深くなる。これは、多くの方が実感する“展示場迷子”の典型です。
その理由は簡単です。そこにあるのは、各社の「強み」や「得意なスタイル」であって、あなたの暮らしに必要なものとは限らないからです。どの会社も親切で、どの提案も魅力的です。でもそれが続くと、だんだんと「本当に自分たちはどうしたいんだっけ?」という“自分軸”を見失ってしまうのです。
情報過多の時代の家づくり
今の時代、インスタグラムを中心としたSNSにたくさんの家づくりの情報があります。家づくりをする上で、情報収集はとても大切です。でもこれだけの情報過多の時代の中で家づくりを行うことは逆に難しいとも言えます。ご自身にとって何が本当の情報で、何が偽物の情報なのか、そういったノイズを取り払うことも大切なのです。
つまり、現代の家づくりは「何を選ぶか」ではなく、「何を選ばないか」という視点も重要なのです。展示場は、たくさんの情報を得られる場所です。でも大切なのは、情報を集めることではなく、「何を捨てるか」を自分たちで決めることなのです。
FORTは、こうした“分かりづらさ”や“決めづらさ”を感じるすべてのご家族に寄り添うために、あえて総合展示場という形式を持ちません。なぜなら、本当の住み心地は、表面的なきらびやかさから感じるのではなく、日々の暮らしの中にこそ宿ると考えているからです。
だからこそ、私たちは「モデルハウス見学」に加えて、実際に建てたお客様の暮らしを体感できる場を大切にしています。例えば、朝の光がどう差し込むか、料理中の視線がどう抜けるか、帰宅後の動線がどれだけスムーズか。そうした「感覚としての納得」が得られるよう、宿泊体験やOB宅訪問、個別のライフプラン相談といったリアルな接点を重ねてきました。
もしあなたが、展示場を見て「分かったようで分からない」と感じたなら──それは、“本当に大切なものに気づき始めた”証拠かもしれません。その気づきを大切に、ぜひ一度、私たちの“リアルサイズの家”を体感しに来てください。納得のいく家づくりは、あふれる情報の比較ではなく、“自分たちの暮らし”と深く向き合うところから始まります。