快適性と資産価値が長く続く「気密性」の考え方
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快適性と資産価値が長く続く「気密性」の考え方

2022年7月26日

日本の住宅の寿命は、わずか30年程度であるといわれています。これは日本の住宅が「質よりも価格」を優先して、住宅と相性のよくない断熱材を用いていることが主な原因です。

30年という寿命は、アメリカのおよそ60年や、イギリスのおよそ80年と比較すると大きく下回っています。もちろん安く家づくりができるのは良いことですが、安かろう悪かろうの住宅では快適性・資産価値が期待できません。
また住宅の寿命が30年でも、私たちの暮らしはそれよりも長く続きます。そのため、これからの住宅は耐久性2倍を目指し、快適性・資産価値を長続きさせる住宅をつくるべきなのです。

この記事は、短寿命と言われている現在の日本住宅を”長寿命な住宅へ変えるヒント”についてご紹介するブログシリーズです。
第三弾である今回は、快適性・資産価値が長く続く家づくりに重要な「気密性」についてご紹介します。

今回のテーマ「気密性」

それでは、第三弾である今回のテーマ「気密性」についてご紹介します。
「気密性」とは一体どのようなものでしょうか。ここでは「気密性の定義」とPart.02で紹介した「”断熱性”との関係」について解説します。
長寿命の家づくりにおいて重要なキーワードですので、ひとつずつしっかりと理解していきましょう。

気密性とは
「気密性」と「断熱性」の関係

 

気密性とは

気密性とは、「空気を密閉する性能」のことです。
室内の空気を外部に漏らさず、屋外の空気を室内に進入させない能力と定義でき、高い気密性があれば年中室内の温度を快適に維持することができます。気密性の高い住宅を建てるには、寸法誤差の少ない高品質な建材を用いたり、建材と建材のつなぎ目を気密テープやシートなどを使って隙間を作らないよう施工していきます。
気密性を確保することによって冷暖房といった空調設備にかかってしまう光熱費を抑えられる他、室内の空気の換気性を高めるという特徴を持ちます。

 

「気密性」と「断熱性」の関係

Part.03で紹介する「気密性」は、Part.02で紹介した「断熱性」と深い関係があるのをご存じですか?
家づくりでは「気密性」と「断熱性」はセットで考えられており、これはセーターとダウンジャケットの関係に似ています。たとえば真冬の寒い時期、セーターを着ていても、風が吹けば毛糸のスキマから冷たい空気が入ってしまい、身体が温まりません。しかし、気密性の高いダウンジャケットであれば、スキマから冷たい空気が入り込まなくなり身体を温めることができます。
つまり、「気密性」と「断熱性」は、必ず両方が必要なのです。両方が揃うことで、快適で長持ちする住宅をつくり出せるのです。

 

気密性が低いと何が起きるのか

「気密性」と「断熱性」の関係から分かるように、住宅にスキマがあると冬は寒く、夏は暑い家になってしまいます。つまり、冷暖房効率が悪く光熱費が高くなってしまうのです。

また気密性は住宅の換気性能にも大きな影響を与えます。これは”穴の空いたストロー”に例えて説明することができます。
普通のストローは、吸い口から吸い込めば液体がすぐに上がってきます。しかし、このストローのあちこちに穴(スキマ)が開いていたらどうなるでしょうか?いくら吸い口から吸い込もうとしても、穴(スキマ)から空気が入ってしまったり、液体が漏れてしまったりして、思うように吸い上げることはできません。
「気密性の高い家は空気が溜まって、息苦しくなるのではないか」という心配をされる方がいらっしゃいますが、むしろ逆で、気密性に優れた家は換気性能が高くなるため、常に空気を新鮮な状態に保てるのです。

これに併せて覚えてほしいのが、日本は湿気が溜まりやすい気候をしているということです。気密性が低い住宅は、住宅の中に湿気を取り込んでしまい、次のようなトラブルの原因になることもあります。

断熱材の効果を低下させ「ヒートショック」の原因になり得る
壁の内側に湿気を取り込み「壁内結露」や「カビ」の原因になる
換気効率が落ちてしまい「イヤなニオイ」や「よどんだ空気」の原因になる

気密性は「室内の温度」だけに関係するのではなく、実は健康面やコストにも大きく関わる要素です。快適な家づくりを行うために、断熱性と併せてしっかりと対策を心がけておきましょう。

 

気密性能を決める数値

どのような基準で気密性の高さが決まるのでしょうか。
気密性の度合いは、家にどの程度のスキマがあるかを表す「C値」で評価されます。

C値とは、住宅の気密性能を表す値です。日本語では「隙間相当面積」と表現されます。「1m²あたり、どれだけのすき間があるか」を表す数値と言い換えると覚えやすいでしょう。
C値の基準はエリアによって異なりますが、おおむね「5.0程度(1m²あたり5cm²)」が一般的です。ただし、高性能と評価される数値は「1.0(1m²あたり1cm²)」です。
高気密・高断熱な家づくりを求める方は、さらに高性能な「0.5(1m²あたり0.5cm²)以下」を目指すべきです。
紹介したC値は、家づくりを始めると必ず目にすることになるキーワードなので、今のうちから確実に理解しておきましょう。

 

高気密のデメリットだと思われている点とは?

上述したように高気密な住宅は「空気がこもって換気されないのではないか」というマイナスのイメージを持たれがちです。しかしこれも繰り返しお伝えしますが、高気密な家はむしろ「適切な換気を設計することで換気性能がアップする」のです。
高気密な住宅に持たれがちなマイナスのイメージは以下のとおりです。
それぞれ解決できることを覚えておきましょう。

「コストがかかる」

たしかに建築費用はかかります。しかし光熱費が抑えられ、住宅の劣化も防止できることを考慮すると、総合的なランニングコストを見れば簡単にモトが取れます。

「結露リスクを高める場合がある」

住宅のスキマが多いと室内に湿気が溜まって結露するため、気密性アップはむしろ結露防止につながるということは、既にお伝えしたとおりです。

「夏場に熱気がこもる」

気密性が高いと空調効率が上がるため、ちょっとエアコンをつければ室温はすぐに調整できます。また換気性能が高いため、すぐに空気を入れ替えることもできます。

「息苦しくなる」、「ニオイがこもる」

これはまさに事実とは逆であり、「気密性が高い=換気性が高い」ことから、むしろ空気循環が良いことは既にお伝えしたとおりです。例えば一般的なマンションは気密性の高い構造ですが、「マンションだから息が苦しい」ということはないかと思います。

 

高気密・高断熱の家のメリット

快適で資産価値が長持ちする家づくりをするならば、高気密・高断熱のセットを意識しましょう。2つの性能を高めることによって次に示すメリットが得られます。

気密性と断熱性がセットになることで、冬は暖かく、夏は涼しい家になる
冷暖房効率が高まるため、光熱費を削減でき省エネになる
換気性能が高まるため、室内の湿気を外部に排出してくれて、空気をキレイに・新鮮に維持できる
寒暖差によって発生するヒートショックのリスクを抑えられる
結露やカビの発生を抑え、長寿命な家が生まれる

気密性と断熱性はバラバラに考えるのではなく、セットで考えることが大切です。断熱性だけを考えた住宅は湿気が溜まりやすくなりますが、気密性を組み合わせることによって本当に快適な家を生み出せます。
何十年も健康な住宅をつくるためには「高気密・高断熱」な家を意識することが大切なのです。

 

まとめ

快適性・資産価値が何十年も続く家づくりで重要となる「気密性」についてご紹介しました。その中でも、覚えておきたい気密性の重要ポイントは次のとおりです。

気密性とは「室内の空気を外部に漏らさない能力」および「家にスキマ風を入れない能力」のこと
気密性と断熱性はセットで考えることによって快適な住宅を生み出せる
気密性は家にどの程度のスキマがあるかを表す「C値」で評価でき、高気密・高断熱な家をお求めの方は0.5以下を目指すのが良い
高気密な家は空気がこもりやすいと思われがちだが、実は逆に快適になる
高気密・高断熱の家をつくることによって、光熱費がおさえられ、健康的で快適な生活が送れる

快適性・資産価値のある家づくりを行うためには、高気密・高断熱な家がカギを握ります。